啓脾湯とは

啓脾湯は、読んで字のごとく「脾(漢方薬学で言うところの消化吸収器官」を「啓する(開き、活性化させること)」漢方薬で、胃腸が弱り、消化不良や胃腸炎、下痢を起こしている人に用いる漢方薬です。同じく胃腸虚弱を改善する漢方である「四君子湯」をベースに「気(体力・気力などのエネルギー)」を補う生薬と体内の水分を調整する生薬を追加し、胃腸の不調の中でもより「下痢が主訴となる不調」を改善する処方になっています。

啓脾湯の生薬について

・白朮(ビャクジュツ)…キク科オケラまたはオオバナオケラの根茎です。健胃作用、強壮作用、止瀉作用、利尿作用があり、胃腸の強壮薬の代表的な生薬です。

(白朮の代わりに蒼朮(ソウジュツ)が用いられることもあります。同じく健胃作用をもちますが、利尿など水分代謝の効果のほうが主になります)

・茯苓(ブクリョウ)…サルノコシカケ科のマツホドの菌核を輪切りにしたものです。利尿作用に優れ、体内の水分量を調節する効果があります。他鎮静作用、健胃作用があります。

・山薬(サンヤク)…ヤマノイモ科ナガイモの皮を取り除いた根茎で、とろろとして食用にするのと同じものです。ステロイド用作用があり、滋養強壮の薬となります。

・人参(ニンジン)…ウコギ科のナタネニンジンの根で、よく知られた滋養強壮薬です。健胃作用、鎮静作用も持ちます。

・沢瀉(タクシャ)…サジオモダカという植物の皮を除いた根茎で、茯苓と同じく利尿作用があり、めまい、口渇、胃内停水などの症状に用います。

・陳皮(チンピ)…ウンシュウミカン、ポンカンなど柑橘類の果皮を陰干しにして1年たったものです。健胃、鎮吐、鎮咳、去痰作用があり、気を整える生薬として広く使われています。

・蓮肉(レンニク)…ハスの実です。足りない気を補う作用をもち、滋養強壮薬のひとつとして使われています。他に止瀉作用、 鎮静作用、 健脾作用、 安神作用を持ち、特徴としては消化器官に働き下痢を止める効能があることがあげられます。

・山ざ子(サンザシ)…バラ科のサンザシの果実で、消化を助ける働きをします。他薬効としては健胃作用、止瀉作用、抗菌作用があげられ、肝に働き慢性的な下痢を止めます。

・甘草(カンゾウ)…マメ科カンゾウの根を乾燥させたものです。鎮痛、鎮痙作用があり、炎症を和らげ緊張を緩和させます。

啓脾湯の効能

啓脾湯は「補気」と「利水」の二つの働きによって胃腸の不調を改善しようという漢方薬です。特に慢性的な下痢に効果を発揮します。

慢性の下痢は、胃腸の機能が低下することと、さらに体の中の水分量のバランスが崩れることで起こっています。

胃腸の機能が弱っているのは、生命活動のエネルギーである「気」が不足しているということ。そこで、人参・甘草・山薬・蓮肉といった滋養強壮効果のある生薬群で「補気」、つまり気を補い力をつけて、消化機能の回復をはかります。

そして茯苓、沢瀉、白(蒼)朮など水分を調節する生薬によって、腸の中の水分量を正常にします。

この二方向からのアプローチによって原因が排除され、下痢体質も改善していくということです。

啓脾湯の使用法

「湯」は煎じ薬の意味であり、啓脾湯ももともとは生薬を煮出して飲む必要がありますが、現在では濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流です。煎じる手間がなく、手軽に服用を続けられます。医師に処方された1日量を3回に分けて食前または食間、つまり基本的には空腹時に服用します。

副作用などはあるか

消化機能が弱っている方に処方される漢方薬であり、効き目はおだやかなので基本的には医師の指示に従って服用する限り重篤な副作用の心配はありません。まれに本当に弱っている方が飲むとムカムカしたり食欲不振が起きたりする場合があります。その場合は処方を変更してもらうなど対処してもらうこともできます。

甘草に含まれる「グリチルリチン酸」の過剰摂取によって「偽アルドステロン症」が起こることがあります。長期にわたって服用する場合はむくみや高血圧の症状が出ないかよく観察し、心配があれば医師に相談してください。