お腹の不調を治す漢方薬「桂枝加芍薬湯」神経性の下痢や便秘に

熱や痛みを発散する風邪薬である「桂枝湯」の芍薬を増やし、消化器の冷えや痛みに特化した漢方薬でおもに胃腸の痛みや下痢・便秘などの排便異常を改善します。

配合される生薬は以下のとおりです。

・桂皮(ケイヒ)…健胃、発汗、鎮痛、整腸作用。身体を温め血行を改善し、冷えからくる痛みを和らげる。

・芍薬(シャクヤク)…鎮痛、鎮痙作用。筋肉の緊張を和らげる。内臓の痙攣や収縮をおだやかにすることで痛みを和らげる。

・生姜(ショウキョウ)…健胃、発汗、食欲増進作用。身体を温める。

・大棗(タイソウ)…鎮静作用。身体を温め、心を落ち着かせる。他の生薬の作用を穏やかにする。

・甘草(カンゾウ)…鎮痛、鎮痙作用。炎症を和らげる。緊張を緩和させる。

全体的に「足りないものを補う」性質の生薬で構成されており、虚弱体質な人に用います。血流をよくして身体を温めてくれる組み合わせです。

また、この処方の柱となる「芍薬」の作用は「肝(自律神経や情緒)」に対して有効で、ストレスや緊張を和らげる力があります。

つまりこの漢方薬は、冷えからくる不調と神経的なストレスによる不調、二方向からアプローチすることができると言えます。

桂枝加芍薬湯はどんな症状に効く漢方薬なのか

桂枝加芍薬湯は、特に「過敏性腸症候群」によって起こる下痢や便秘、それに伴う腹痛を和らげます。

過敏性腸症候群とは、腸の運動や分泌活動に異常が起こり、それによって腹痛や便通の異常など種々の「お腹の不調」が現れる疾患です。

満員電車に乗った時や仕事でのプレゼンの際に必ずお腹を下してしまう、お腹が痛くなる、といった症状が典型的な例ですが、ひどくなると常に下痢気味・便秘気味となり、トイレを気にしながら日常生活を送らなければならないなど、生活の質にも影響が出てきます。

あきらかにお腹に不調があるのですが、病院で検査をしても炎症や潰瘍などの病変が認められず、原因がはっきりしないというところが特徴です。

ストレス社会となった現代で急増している病気であり、神経的なもの、ストレスや緊張が影響しているということは指摘されています。

そもそも胃腸が弱い人は、気力や生命活動のネルギーである「気」が足りなかったり、滞っていたりという体質の傾向があります。気が足りないと冷え性になりますし、滞ると不安やいらいらを溜め込みやすくなります。腸はとてもデリケートな臓器で、そうしたストレス要因に非常に弱いのです。

ストレスを受けて腸の自律神経が乱されると、血流が悪くなって冷えたり、腸の活動が弱って便秘になったり、逆に腸ぜん動が過剰気味となって痛みや下痢を引き起こしたりします。これが過敏性腸症候群の人のお腹の状態です。

桂枝加芍薬湯を用いるのは、「気の不調」を正常にする・・・つまり気が足りていなければ補い(冷えを改善)、滞っていれば発散させて(不安やストレスを軽くする)、腸の不調の原因を取り除こうという考え方によるものです。

桂枝加芍薬湯はどのように使うものか

煎じ薬を濃縮乾燥させた「エキス剤」としての処方が主流です。煎じる必要がなく手軽に飲めるので、忙しい人であっても飲み続けることができます。

用法としては医師に処方された1日量(ツムラのものならば成人1日7.5g)を2~3回に分割し、食前または食間に服用します。お湯に溶かして服用すると効果的です。

副作用などはあるのか

比較的おだやかな処方であり、生薬の刺激が心配な高齢者や妊婦にも適応される漢方薬ですので、用量・用法を守っている限り副作用の心配はあまりありません。

ただし、「甘草」の有効成分である「グリチルリチン酸」は摂取しすぎるとむくみ・高血圧を起こす「偽性アルドステロン症」の原因となります。

比較的ポピュラーな薬効成分であり、市販の風邪薬や抗アレルギー剤にも配合されている場合があるので重複に注意が必要です。「グリチルリチン酸ジカリウム」等の表記がある薬剤を飲んでいる場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

夏バテや熱中症に「清暑益気湯」

「清暑」とは暑さの原因を取り除き涼しくすることを意味し、「益気」とは東洋医学における身体のエネルギー「気」を増やす、つまり身体を元気にするという意味の言葉です。
清暑益気湯(せいしょえっきとう)とは暑さで弱った体を元気にする漢方薬で、夏バテや熱中症といった暑さによって起こる症状に対して効果を発揮します。

配合されている生薬は以下の通りです。

人参(にんじん)……強壮(※身体に活力を与える)作用、健脾(※脾胃の機能を正常にする)作用などがある。
黄耆(おうぎ)………強壮作用、止汗作用、利水(※体内の水の流れを正す)作用、排膿作用などがある。
五味子(ごみし)……滋養作用、固精(※精力を留める)作用、止瀉(※下痢止め)作用、止咳作用、止渇作用などがある。
麦門冬(ばくもんどう)……解熱作用、清熱作用、鎮咳作用、去痰作用、強壮作用などがある。
当帰(とうき)……活血(血の流れをよくする)作用、補血作用、止痛作用などがある。
陳皮(ちんぴ) ……健胃(※胃の機能を正常にする)作用、駆風(※腸内のガスを排出する)作用、去痰作用、鎮咳作用などがある。
甘草(かんぞう)……健胃作用、鎮痛作用、鎮痙作用、去痰作用などがある。
黄柏 (おうばく)……消炎作用、清熱作用、健胃作用、解毒作用などがある。
蒼朮(そうじゅつ)……健胃作用、整腸作用、利尿作用などがある。
※蒼朮に代わり類似の作用を持つ白朮(びゃくじゅつ)を配合していることもあります。

人参と黄耆を使った漢方薬は「参耆剤(じんぎざい)」と呼ばれ、昔から疲労感、倦怠感の解消と胃腸機能の改善に用いられています。さらに解熱作用、清熱作用、消化吸収や身体の水分量の調節作用といった効果を持つ生薬とを配合することによって身体のほてりやむくみを抑え、熱にやられた身体の回復を促します。

清暑益気湯とは何の症状に効く漢方薬なのか

清暑益気湯の効能は主に夏バテや熱中症などに用いられ、食欲不振、全身倦怠感、下痢、ほてりなどの症状に効果を発揮します。

夏バテとは正式な病名というわけではなく、その定義もはっきりと定められてはいません。
高温多湿な日が続く夏などに現れる食欲不振や全身倦怠感といった症状のことを総じて呼びますが、身体の不調に限らず精神的なイライラや無気力感も当てはまります。
しかし夏バテが病気ではないと言っても、放置してよいものではありません。暑さで食欲がわかず、水分や冷麺など栄養価の低いものばかり口にすることで消化機能が落ちさらに食欲が低下してしまったり、精神的な疲労を溜め込みすぎてうつ病など本格的な疾患に陥ってしまうこともあり得ます。
夏場の暑い盛りであっても水ばかりを飲まず、ミネラルなど栄養を考慮した食生活を送ることや、適度な運動と毎日の入浴などでストレスを発散する生活をとるようにするなど自己管理が大切です。

清暑益気湯とはどのように使うものか

清暑益気湯を煎じたものを食間もしくは食前に服用します。
なお、服用する際は安易に自己判断せず医師の診断を仰ぎ、用法用量を守って正しく使うようにしてください。

副作用はあるのか

他の内服薬との併用による配合成分の大量摂取によって副作用が生じることがあります。
加えて、個人によって体質に合わなかったり、アレルギー反応などが出ることもあるかと思います。実際に使用してみて何か異常を感じた場合にはすぐに使用を止め、処方した医師や薬剤師に相談するようにしてください。