十全大補湯とは

十全大補湯は、身体が弱って生命エネルギーである「気」や体に養分を運ぶ「血」が著しく不足し、貧血、冷え性、倦怠感、食欲不振、皮膚の荒れなどを生じている人を助ける漢方薬です。病後や手術後、産後など、体力をひどく消耗してしまった時の身体の回復をサポートします。その名前には「完全に大いに補う」という意味があると言われる通り、消耗性疾患に広く適応される名薬です。

気力を補う「四君子湯」と血を補う「四物湯」を合わせ、そこに黄耆と桂枝を加えたもので、気血を同時に補う滋養強壮の作用があります。胃腸の働きを高め、食物の養分を消化吸収できるようにして絶対的に不足している「気」と「血」を増やします。そして増やすだけでなく、その気血がきちんと全身にめぐるよう調整します。

十全大補湯の生薬について

・人参(ニンジン)…いわゆるチョウセンニンジンで、滋養強壮の薬として名高い生薬のひとつです。高い疲労回復作用があります。新陳代謝機能の改善、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振に効果があります。

・黄耆(オウギ)…マメ科キバナオウギまたはその他同属植物の根を乾燥したものです。止汗、利尿、強壮の作用があり、むくみや麻痺、疼痛、排尿困難などに使用します。

・白朮(ビャクジュツ)…キク科オケラまたはオオバナオケラの根茎です。健胃作用、強壮作用、止瀉作用、利尿作用があり、胃腸の強壮薬の代表的な生薬です。

・茯苓(ブクリョウ)…利水の生薬の代表で、水毒を取り除き利尿作用をもたらします。

・当帰(トウキ)…血を養い血行をよくする働きがあり、冷えや冷えによる痛みを取ります。

・芍薬(シャクヤク)…ボタン科シャクヤク、または近縁種の根です。主に鎮静、鎮痛、筋肉の緊張緩和、冷えの緩和といった作用があります。

・地黄(ジオウ)…ゴマノハグサ科ジオウ属植物の根茎です。補血・強壮の薬として名高く、貧血や虚弱体質の改善に使われます。

・川芎(センキュウ)…セリ科のセンキュウという植物の根が原料です。活血行気の生薬で、血流を改善し、血が滞ることによって起こる頭痛や疼痛を和らげます。また香りによって気うつを晴らします。

・桂皮(ケイヒ)…身体を温めるハーブ、シナモンとして知られ、気のめぐりをよくして発汗、発散、健胃の作用を持ち、冷えからくる痛みを鎮めます。

・甘草(カンゾウ)…マメ科カンゾウの根を乾燥させたものです。鎮痛、鎮痙作用があり、炎症を和らげ緊張を緩和させます。

十全大補湯の効能

消化管の働きを良くして「気」の生産を助け、それによって慢性的な疲労感を取ります。また同時に「血」を増やし、「水」のバランスを取ってくれるオールマイティな漢方薬です。

人参、黄耆の組み合わせは「参耆剤」と呼ばれ、市販の栄養ドリンクにも入っています。十全大補湯ではこれに白朮と甘草も加わり、弱った胃腸を温めてその働きを高めます。茯苓は胃の働きが悪いことによって水分が停滞しているのを取り除きます。これらの働きによって食欲不振や消化不良が解消するほか、気の生産が増えて造血機能も回復します。

造血をサポートする生薬が地黄、当帰、芍薬です。貧血によく効く組み合わせとして有名です。

そして増えた血がきちんとめぐるよう、川芎と当帰が一緒に働くことで血流を良くします。

滋養の漢方としては他に「補中益気湯」が有名ですが、十全大補湯には「血」を補う力が強いことが特徴で、消耗の他に貧血症状が強い場合に適応されることが多いようです。

十全大補湯の使用法

「湯」は煎じ薬の意味で、元来生薬を煮出したものを服用していましたが、現在では濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流です。1日量を2、3回に分け、食前または食間に服用します。

副作用などはあるか

甘草を含む処方なので、生薬特有の副作用である「偽アルドステロン症」に注意します。特に長期服用になる場合が多い方剤なので、むくみや高血圧などがおこっていないかよく注意してください。その他、服用して発疹や胃の不快感、下痢などが現れた場合は早めに医師に相談してください。