不安障害に処方される漢方薬「桂枝加竜骨牡蛎湯」

熱や痛みを発散する風邪薬である「桂枝湯」に、神経の高ぶりを鎮めて心を落ち着ける生薬・竜骨と牡蛎を加えて「心の不調」に処方される漢方薬です。配合されている生薬は以下の通りです。

・桂皮(ケイヒ)…健胃、発汗、鎮痛、整腸作用があり、身体を温め血行を改善し、冷えからくる痛みを和らげる。

・竜骨(リュウコツ)…鎮静、鎮痙、消炎、止血作用があり、神経や情緒を落ち着ける。

・牡蛎(ボレイ)…鎮静、利尿、止渇、止汗作用があり、神経を落ち着かせ滞っているものを排出する。

・芍薬(シャクヤク)…鎮痛、鎮痙作用があり、筋肉の緊張を和らげる。内臓の痙攣や収縮をおだやかにすることで痛みを和らげる。

・生姜(ショウキョウ)…健胃、発汗、食欲増進作用があり、身体を温める。

・大棗(タイソウ)…鎮静作用があり、身体を温め、心を落ち着かせる。他の生薬の作用を穏やかにする。

・甘草(カンゾウ)…鎮痛、鎮痙作用があり、炎症を和らげる。緊張を緩和させる。

弱った身体に気(エネルギー)をめぐらせて身体を整え、かつ竜骨と牡蛎が「肝(神経や情緒)」に働きかけて心の不安やイライラを改善します。

ベースである桂枝湯が温め補うように働くため、虚証(体力がなく冷えがち)の人に用い、気・血の不足や滞りによって起こっている神経への悪影響を緩和して心と身体を正常に近づけます。

桂枝加竜骨牡蛎湯はどんな症状に効く漢方薬なのか

桂枝加竜骨牡蛎湯は不眠症や自律神経失調症、パニック障害などの神経症に用いられます。

これらの疾患は不安障害とも呼ばれ、神経が過敏になって健康な人がふつうに感じる感覚や感情が何倍にもなってしまうという病気です。明確な理由が無いのに不安や焦りを感じたり、イライラしたりして、そのストレスから身体の不調まで引き起こし日常生活に支障をきたします。

不安が強く、神経質になる原因は「気」と「血」のバランスが悪いことです。イライラする、緊張や不安が強いという症状は、「気上衝」といって気が身体の上部に集まって滞ってしまい循環できていない状態。桂枝加竜骨牡蛎湯によって気・血を循環させ、興奮状態を落ち着けることで脳に栄養がきちんといきわたるようになり、機能が回復、正常な精神状態を取り戻すことが出来るというわけです。

桂枝加竜骨牡蛎湯とはどのように使うものか

名前に「湯」が付くとおり、桂枝加竜骨牡蛎湯も元は煎じ薬です。本来ならばとろ火で生薬を40分煮出すという手間がありますが、現在ではそれを濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流となっており粉薬を飲む感覚で服用できます。医師に処方された1日量(ツムラのもので成人7.5g)を2~3回に分けて食前または食後に服用します。お湯に溶かして飲むと良い効果が得られます。

副作用などはあるか

医師の指示に従って服用する限りは重篤な副作用の心配はほとんどありません。

ただし、配合中の「甘草」の有効成分「グリチルリチン酸」は過剰摂取によりむくみや高血圧などを呈する「偽アルドステロン症」を起こすと言われており、重複に注意が必要です。

医薬品としても甘味料としても甘草はポピュラーなため、知らず知らずに摂取していることがあります。念のため、同時期に服用する医薬品やお菓子の成分表示には気をつけておきましょう。

中年以降の慢性的な頭痛に「釣藤散」

釣藤散(ちょうとうさん)とは、高血圧、動脈硬化症、脳梗塞などの脳血管障害に伴う頭痛などの症状に対して用いる漢方薬です。起床時や興奮時に起こる頭痛や頭重感、ふらつき、めまい、顔のほてりなどの症状に対しても効果を発揮します。

配合されている生薬は以下の通りです。

釣藤鈎(ちょうとうこう)……鎮痛作用、鎮静作用、鎮痙作用、解熱作用、降圧作用などがある。
人参(にんじん)……強壮(※身体に活力を与える)作用、抗ストレス作用、健脾(※脾胃の機能を正常にする)作用などがある。
茯苓(ぶくりょう)……利水(※体内の水の流れを正す)作用、健脾作用、安神(精神を安定させる)作用などがある。
陳皮(ちんぴ) ……健胃(※胃の機能を正常にする)作用、駆風(※腸内のガスを排出する)作用、去痰作用、鎮咳作用などがある。
甘草(かんぞう)……健胃作用、鎮痛作用、鎮痙作用、去痰作用などがある。
生姜(しょうきょう)……健胃作用、発汗作用、鎮吐作用などがある。
石膏(せっこう)……清熱作用、止渇作用、沈静作用などがある。
防風(ぼうふう)……解表(※発汗)作用、解熱作用、鎮痛作用などがある。
菊花(きくか)……解表作用、明目作用、清熱作用、解毒作用などがある。
麦門冬(ばくもんとう)……止咳作用、補陰(※臓腑の調節)作用、去痰作用などがある。
半夏(はんげ)……止嘔作用、去痰作用、鎮静作用などがある。

血圧を下げる作用や循環を改善し血行を良くする作用により、高血圧が原因となる頭痛や頭重感を緩和させます。また、体内の熱や水分の量を調整する作用などに優れた生薬らが配合されており、その効果がめまいやふらつきなど諸症状の改善をもたらします。

釣藤散とは何の症状に効く漢方薬なのか

釣藤散は中年以降の比較的体力のある方を対象としており、その効能は主に高血圧、動脈硬化症、脳梗塞などの脳血管障害に伴う頭痛などに用いられ、特に朝型に症状が強い場合に適しているとされています。慢性的な頭痛や頭重感、肩こり、めまい、耳鳴りといった症状や、怒りっぽい、イライラしやすい、眠れないといった精神的な不調にも効果が期待できます。また、抗認知作用も認められており、老人性痴呆に対しても使用されることがあります。

ただし、釣藤散が適応となる頭痛は片頭痛や群発性頭痛のような突発的な激痛を起こすものではありません。そういった強い痛みを伴う症状に対しては「川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)」や「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」といった漢方薬が適用となります。御使用の際には医師や薬剤師と相談し、症状に合った漢方薬を選択してください。

釣藤散とはどのように使うものか

釣藤散を煎じたものを食間もしくは食前に服用します。
なお、服用する際は安易に自己判断せず医師の診断を仰ぎ、用法用量を守って正しく使うようにしてください。

副作用はあるのか

他の内服薬との併用による配合成分の大量摂取によって副作用が生じることがあります。
加えて、個人によって体質に合わなかったり、アレルギー反応などが出ることもあるかと思います。実際に使用してみて何か異常を感じた場合にはすぐに使用を止め、処方した医師や薬剤師に相談するようにしてください。