肘後方とはどんな漢方薬なのか

肘後方(ちゅうごほう)とはまたの名を「奔豚湯(ほんとんとう)」という漢方薬です。
東洋医学では「奔豚気」という言葉があります。「奔豚」とは「豚が走り回っている」という意味で、ストレス性の動悸を、豚が胸の中を走り回っているような感覚になぞらえたものです。奔豚気とは不安や恐怖、驚きによってイライラやストレスが溜まり動悸が激しくなる状態、いわゆる「パニック障害」をさす言葉です。そして奔豚湯――肘後方はこの奔豚気を改善することを目的とした漢方薬になります。
肘後方は動悸を伴う心因性の神経症に対して用いる漢方薬で、精神を安定させ、自律神経の働きを整える作用が期待できるものです。また、胃腸の働きを整える作用もあるため、心因性の不調が胃腸症状にも表れている場合にも適用とされます。

配合されている生薬は以下の通りです。

呉茱萸(ごしゅゆ)……健胃作用、温裏(※寒さを散らす)作用、鎮痛作用、利尿作用などがある。
人参(にんじん)……強壮(※身体に活力を与える)作用、抗ストレス作用、健脾(※脾胃の機能を正常にする)作用などがある。
生姜(しょうきょう)……発汗作用、健胃(※胃の機能を正常にする)作用、鎮吐作用などがある。
甘草(かんぞう)……健胃作用、鎮痛作用、鎮痙作用、去痰作用などがある。
桂皮(けいひ)……発汗作用、止痛作用、解肌(※発汗)作用などがある。
半夏(はんげ)……止嘔作用、去痰作用、鎮静作用、鎮痙作用などがある。

肘後方に使われる生薬に含まれている成分は、交感神経を鎮めて自律神経の安定性を改善する作用に優れており、精神を落ち着かせる効果が期待できます。また、身体を温め胃腸状態を整える作用にも優れた配合となっています。

肘後方とは何の症状に効く漢方薬なのか

肘後方の効能は主にパニック障害、ヒステリー、不安神経症、神経性心悸亢進症、自律神経失調症といった心因性疾患と、それらに伴う動悸や胸痛、腹痛などの胃腸症状に対して用いられます。

心因性疾患に用いられる漢方薬は他にも多くあります。特にイライラが強い場合には「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」、のどが詰まったような違和感がある方には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」、貧血があり緊張が強い場合には「帰脾湯(きひとう)」といったものが適用とされるかと思います。また、「香蘇散(こうそさん)」、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」など、他の疾患に用いられることが多いものであっても、その作用が適している場合、心因性疾患の治療に用いられることもあります。
漢方薬を御使用の際には医師や薬剤師と相談の上、症状に合ったものを御使用下さい。

肘後方とはどのように使うものか

肘後方を煎じたものを食間もしくは食前に服用します。
なお、服用する際は安易に自己判断せず医師の診断を仰ぎ、用法用量を守って正しく使うようにしてください。

副作用はあるのか

他の内服薬との併用による配合成分の大量摂取によって副作用が生じることがあります。
加えて、個人によって体質に合わなかったり、アレルギー反応などが出ることもあるかと思います。実際に使用してみて何か異常を感じた場合にはすぐに使用を止め、処方した医師や薬剤師に相談するようにしてください。

疲労回復を意識した薬膳レシピ

疲れた時はどうしても食欲が落ちがちですが食べないことには体力の回復は望めません。体に優しく疲労回復に効果がある薬膳料理2品をご紹介します。

鶏肉とじゃがいものあんかけ

【材料】
じゃがいも…3個
鶏挽肉…80g
空豆またはえだまめ…適量
にんじん…適量
出汁…300cc
酒…大さじ1
みりん…大さじ1
しょうゆ…大さじ1/2
砂糖…大さじ1/2
塩…少々
水溶き片栗粉…大さじ1

【作り方】
1.じゃがいもはよく洗って皮つきのまま食べやすい大きさに切ります。空豆はゆでて皮をむき、にんじんはイチョウ切りにして軽く茹でておきます。
2.熱したフライパンに鶏挽肉と酒を加えて挽肉がぽろぽろになるまで炒めます。
3.2にじゃがいもと出汁、みりん、砂糖、しょうゆ、塩を加え、じゃがいもが軟らかくなるまで煮ます。
4.3にそら豆、にんじんを加えてサッと混ぜ、水溶き片栗粉でトロミをつけて完成です。

鶏肉は血や気を補ってくれる働きがあり、さらに体を温めてくれます。陰を補うため疲労回復に効果があります。挽肉は低脂肪でヘルシーでダイエット中の方にもおすすめです。

じゃがいもや空豆は胃の働きを整え消化を助ける働きがあります(健胃)。にんじんは彩り以外にも気や血を補ってくれます。しょうがをすりおろして加えると体がぽかぽか温まります。とろみをつけることで体が温まります。

やわらか山芋の海老しんじょうきのこあんかけ

【材料】
山芋…200g
海老(冷凍でも可能、身のみ)…30g
きくらげ…2g
にんじん…10g
ねぎ(刻んだもの)…大さじ1
しめじ・まいたけ…適量
しょうが汁…ひとかけ分
出汁…600cc
しょうゆ…大さじ1
みりん…大さじ2
塩…少々
片栗粉…小さじ1
水(水溶き片栗粉用)…小さじ1

【作り方】
1.海老は熱湯に少量の酒を入れてサッと茹でて細かく刻みます。きくらげは水で戻して細切りにします。にんじんとねぎは小さく刻みます。
2.山芋の皮をむきすりおろし、1を加えて混ぜ、ラップにで包んでひねり巾着状にします。
3.鍋に、出汁、しょうが汁、しょうゆ、みりん、塩、しめじ、まいたけを入れて、ひと煮立ちさせます。
4.2を電子レンジ500Wで1~2分加熱し、ラップを外して3に入れて1~2分ほど煮ます。
5.水溶き片栗粉を入れてとろみをつけ、完成です。

山芋は滋養を高め、パワーを蓄えている腎に働きかけ、疲労倦怠や尿トラブルなどを改善してくれるはたらきがあります。腰の冷えが気になる方やパワー不足の方におすすめの食材です。えびは身体を温めながら食欲不振を改善して、体力を回復したり、こちらも足腰の冷えを改善します。

きくらげは貧血や不正出血を改善して、元気をつけてくれるほか、色と食感のアクセントになります。
にんじんは消化不良や目のトラブルを改善してくれる働きを持ちます。ねぎはお腹を温めながら、冷え症やのどの痛みなど風邪の初期症状に働きかけて回復に努めます。

しょうがは身体を温めながら胃腸の働きを調整し、冷えたときの胃痛や嘔吐、食欲不振などを改善してくれます。器に盛り付けて仕上げにすりおろししょうがを添えてもよいでしょう。