化膿した傷には「千金内托散」

「内托(ないたく)」とは「膿を内から外へ押し出し傷を治す」といった意味を持った言葉で、千金内托散(せんきんないたくさん)は主に化膿性の皮膚疾患に対して用いられる漢方薬です。体力の低下などの要因により長期にわたって疾患が治癒しない、化膿部位から膿が出続けるといった場合に適用とされており、痔、軽度の床ずれなどにも処方されることがあります。

配合されている生薬は以下の通りです。

人参(にんじん)……強壮(※身体に活力を与える)作用、健脾(※脾胃の機能を正常にする)作用などがある。
黄耆(おうぎ)………強壮作用、止汗作用、利水(※体内の水の流れを正す)作用、排膿作用などがある。
当帰(とうき)……活血(※血の流れをよくする)作用、補血作用、止痛作用などがある。
川芎(せんきゅう)……駆瘀血(※血の滞りを改善する)作用、活血作用、鎮静作用、鎮痛作用などがある。
防風(ぼうふう)……解表(※発汗)作用、発散作用、解熱作用、鎮痛作用などがある。
白芷(びゃくし)……解表作用、止痛作用、止帯(※下り物を止める)作用、排膿作用、抗菌作用などがある。
桂皮(けいひ)……発汗作用、止痛作用、解肌(※発汗)作用などがある。
桔梗(ききょう) ……止咳作用、去痰作用、排膿作用などがある。
厚朴(こうぼく)……整腸作用、健胃作用、去痰作用などがある。
甘草(かんぞう)……健胃(※胃の機能を正常にする)作用、鎮痛作用、鎮痙作用、去痰作用などがある。

胃腸の状態を整え、低下した体力を補う作用と共に、循環改善や解熱作用、鎮痛作用、発散作用、そして排膿作用に優れた生薬らの効果によって溜まった膿を取り除き疾患の治癒を促す配合となっています。

千金内托散とは何の症状に効く漢方薬なのか

千金内托散の効能は主に体力の低下している方を対象とし、化膿性の皮膚疾患に対して用いられます。体力が低下している、消耗している場合、或いはもともとが虚弱体質である場合など、皮膚疾患の治癒が遅く悪化してしてしまうことがあります。化膿し膿が出続けてしまうような状態になった場合、膿の排出と傷の治癒が促すのに千金内托散は効果を発揮します。
ちなみに、軽度なものや初期の症状の場合、「排膿散(はいのうさん)」「排膿湯(はいのうとう)」「荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)」といった他の漢方薬が使われる事が多いです。ごく初期の場合これらの漢方薬を使い、症状が進行した場合、千金内托散に切り替えるといった処方がされることもあります。
使用する漢方薬は医師や薬剤師と相談の上、症状に合わせて選択するようにしてください。

千金内托散とはどのように使うものか

千金内托散を煎じたものを食間もしくは食前に服用します。
なお、服用する際は安易に自己判断せず医師の診断を仰ぎ、用法用量を守って正しく使うようにしてください。

副作用はあるのか

他の内服薬との併用による配合成分の大量摂取によって副作用が生じることがあります。
加えて、個人によって体質に合わなかったり、アレルギー反応などが出ることもあるかと思います。実際に使用してみて何か異常を感じた場合にはすぐに使用を止め、処方した医師や薬剤師に相談するようにしてください。

化膿性皮膚炎の漢方薬「荊防敗毒散」赤い湿疹やニキビに

荊防敗毒散はおできやニキビ、じくじくした湿疹等を改善する漢方薬です。漢方名の「荊防」は生薬の「荊芥」と「防風」のことで、この2つの生薬の解表作用(表皮に生じた毒を発散する作用)による治療をメインとしています。皮膚の痒みや蕁麻疹などによく処方される「十味敗毒湯」の元となった漢方薬ですが、これよりも「清熱(身体の熱を取る)」の力が強く、化膿して、赤くなり、痛みが出るような皮膚炎を改善します。

荊防敗毒散の生薬について

・荊芥(ケイガイ)…解熱、消炎、鎮痛作用があり、皮膚疾患に用いられます。

・独活(ドッカツ)…発汗、解熱、鎮痛、抗炎症作用があります。

・連翹(レンギョウ)…清熱解毒作用、消炎作用、排膿作用があり、熱や毒素を取り除きます。

・防風(ボウフウ)…発汗作用、発散作用、鎮痛作用があり、皮膚の症状に効果があります。

・柴胡(サイコ)…解熱作用、消炎作用、鎮痛作用、抗菌作用があり、「冷やしながら発散する」という特徴があります。

・桔梗(キキョウ)…咳止め薬として有能な生薬ですが、抗炎症作用、排膿作用にも優れています。

・前胡(ゼンコ)…こちらも喉の薬としての効果が高いですが、消炎作用、鎮痛作用、抗菌作用を持ち、皮膚にも働くことから加えられています。

・茯苓(ブクリョウ)…利水作用に優れ、体内の水分バランスを調整します。

・羌活(キョウカツ)…発汗作用、鎮痛作用があり、身体の上部かつ表面の痛みに効きます。

・薄荷(ハッカ)…「ミント」と呼ばれているハーブと同じものです。言わずとしれた清涼成分メントールを含み、身体を冷やしながら体表の毒を発散させます。

・枳殻(キコク)…ダイダイの成熟した果実です。健胃作用があり、また身体のエネルギー循環を正常にします。

・金銀花(キンギンカ)…清熱作用に優れ、体にこもった熱を冷まします。皮膚の化膿によく効きます。

・甘草(カンゾウ)…鎮痛、鎮痙作用があり、炎症を和らげます。

荊防敗毒散の効能

荊防敗毒散の主な効能は、「解表」と「清熱」の2つです。

あらゆる皮膚の症状は、皮膚が外部からなんらかの刺激を受け、それに対して身体が反応することで起こっています。その反応の仕方に「体質」が深く関わっているというのが漢方薬の考え方です。赤い発疹が出来やすく、化膿するのは「身体に余計な熱がこもっている状態・体質」ということ。熱は炎症につながります。

荊防敗毒散には、炎症を鎮め膿を出し、身体を冷やす生薬がふんだんに使用されています。

「すでに炎症となって体表に現れている毒」を荊芥・独活・柴胡・薄荷が発散させ、「熱を持ちやすい身体」を連翹、前胡、金銀花が冷ますことで化膿性の皮膚炎を鎮めます。そのほか、じくじくを引かせたり、エネルギーが滞らずに循環するように調整したりという生薬が含まれており、全体的な体調を整えます。

荊防敗毒散の使い方

「散」は砕くという意味。かつては原料の生薬を薬研で砕き、そのまま服用していました。しかし現在ではその成分を濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流ですので、粉薬のように手軽に飲めるようになっています。処方された1日量を3回に分け、食前又は食間に服用します。

副作用などはあるか

基本的には、医師の指示に従って服用する限りは重篤な副作用の心配はありません。ただし、人によっては吐き気や食欲不振などが起こる場合があります。

「甘草」の成分「グリチルリチン酸」は過剰摂取によりむくみや高血圧などを生じる「偽アルドステロン症」を起こすと言われていますので、他に服用している薬剤がある時は重複がないか成分をチェックし、心配な場合は医師に相談してください。

さまざまな外傷に使える軟膏薬「神仙太乙膏」

神仙太乙膏(じんせんたいつこう)はかつて中国で非常に優れた効果を有する外傷薬であったことから「神仙」の名で呼ばれたという逸話を持つ軟膏です。
軽いケガや皮膚疾患に対して幅広い効果を及ぼし、やけど、切り傷、虫さされ、軽度の床ずれに対して用います。
また、あらゆる場合に適用されるわけではありませんが、乾燥によるかゆみを抑え傷を治す効果を期待してアトピーの治療にも用いられることがあります。
用途が多彩であることから、ちょっとしたケガの治療など一家にひとつ置いておくと便利な薬であるといえるでしょう

配合されている生薬は以下の通りです。

当帰(とうき)……活血(※血の流れをよくする)作用、補血作用、止痛作用などがある。
桂皮(けいひ)……発汗作用、止痛作用、解肌(※発汗)作用などがある。
大黄(だいおう)……活血作用、駆瘀血(※血の滞りを改善する)作用、瀉下(※水などを注ぎくだす)作用、清熱作用などがある。
芍薬(しゃくやく)……補血作用、鎮痛作用、鎮痙作用、収斂(※体液を漏らさず集める)作用などがある。
熟地黄(じゅくじおう)……補血作用、強壮(※身体に活力を与える)作用、清熱作用などがある。
白芷(びゃくし)……解表(※発汗)作用、止痛作用、止帯(※下り物を止める)作用、排膿作用、抗菌作用などがある。
玄参(げんじん)……滋陰(※潤い、冷やす)作用、清熱作用、除煩(煩躁状態の改善)作用などがある。
胡麻油(ごまあぶら)……潤腸作用や肌潤作用などがある。軟膏の固さ調節にも用いられる。
蜜蝋(みつろう)……解毒、消腫、生肌(※傷あとの再生促進)作用などがある。軟膏の固さ調節にも用いられる。

熱感や炎症を鎮める作用や血液の循環を促す作用に秀でた生薬が多く使われており、肉芽形成の効果も高い優れた外傷薬となっています。患部が化膿している場合においても効果があるとされており、傷類の治療において幅広く活用できるものとなっています。

とは何の症状に効く漢方薬なのか

神仙太乙膏の効能は主にやけど、切り傷、虫さされ、軽度の床ずれに対して用いられます。患部が乾燥した状態であっても、湿潤した状態であっても使用できるとされています。
また、漢方軟膏でありステロイドなどが使われていないため、アトピーで皮膚を掻き毟ってしまった怪我に対しても安心して使うことができるというメリットもあります。

とはいえ、血液や浸出液が多量に出ているような状態ですと充分な効果を発揮するのが難しい場合があります。症状によっては患部に雑菌が繁殖し症状が悪化する恐れもあるため、怪我の程度が重い場合には医療機関で診察を受けることをおすすめします。

神仙太乙膏とはどのように使うものか

神仙太乙膏を患部に塗布して使用します。
なお、使用する際は処方した医師や薬剤師の指示に従い、用法用量を守って正しく使うようにしてください。

ちなみに、神仙太乙膏にはカレーのような独特の臭いがあり苦手とされる方も多いそうなのでその旨ご留意ください。

副作用はあるのか

個人によって体質に合わなかったり、アレルギー反応などが出ることもあるかと思います。実際に使用してみて何か異常を感じた場合にはすぐに使用を止め、処方した医師や薬剤師に相談するようにしてください。