滋陰至宝湯とは

滋陰至宝湯は、慢性化した咳や痰を改善する漢方薬です。「滋陰」は「陰(潤い)を養う」という意味。肺の渇きを潤し、咳を止めて痰を切れやすくします。

「滋陰降火湯」とは二文字違いの名称に、その使用目標も「乾いた咳」と一見よく似た処方であるように思われますが、滋陰至宝湯は生薬構成的には「加味逍遙散」の加減方(生薬を足したり引いたりしたもの)です。咳や痰に加え更年期障害様の不調がある時、たとえばイライラやうつなどの精神症状もある場合は、滋陰至宝湯の適応となります。倦怠感があり食欲不振を訴える、体力を消耗した女性によく処方されています。

肺を潤すだけでなく、血の巡りを良くして身体の中から元気になるよう働きかけてくれる漢方薬です。

滋陰至宝湯の生薬について

・当帰(トウキ)…肝に血を補い、血行促進、鎮静、鎮痛の効果があります。

・芍薬(シャクヤク)…肝の熱を冷まし痙攣を鎮めて鎮痛します。

・白朮(ビャクジュツ)…脾に気を補い健胃、利水作用があります。

・茯苓(ブクリョウ)…利尿の代表的生薬。胃内の水を除き精神を落ち着けます。

・柴胡(サイコ)…肝の熱を冷まします。解熱、消炎、鎮痛作用があります。

・甘草(カンゾウ)…胃や脾に気を養い、咳を止めます。健胃、鎮痛、滋養強壮作用を持ちます。

・薄荷(ハッカ)…肝の気の流れを良くし、体表を冷やします。解熱、消炎、健胃に働きます。

・陳皮(チンピ)…健胃、鎮吐、鎮咳、去痰作用があり、気のめぐりを助けます。

・知母(チモ)…解熱、鎮静作用があります。

・香附子(コウブシ)…血の巡りを良くし、気鬱を晴らします。

・地骨皮(ジコッピ)…消炎、解熱、強壮があります。

・麦門冬(バクモンドウ)…肺を潤して解熱、消炎、鎮咳、去痰作用をもたらします。

・貝母(バイモ)…胸部の熱を冷まし、鎮咳、去痰、排膿作用を持ちます。

滋陰至宝湯の効能

肺の乾燥を潤すほか、「気(エネルギー)」を補う効能があります。「脾(消化器系)」と「肝(造血系)」の働きを助けることで気血を増やし、流れを良くして総合的に身体の調子を整えます。

麦門冬、貝母、知母、地骨皮は肺の熱を冷まし潤いを与える生薬のグループです。これらが主訴となるしつこい咳を抑えます。肺に水分が戻り、痰の粘りが取れ切れやすくなります。また咳が長引いてしまう状態を「病とたたかうエネルギーの不足」と見て、白朮、茯苓、甘草、陳皮によって胃腸の働きに力をつけて気の生産を促します。当帰と芍薬は血を増やし、身体にきちんと栄養が行き渡るようにしてくれます。

滋陰至宝湯のもう一方の目標であるイライラや気うつなどの精神症状は、情緒を司る「肝」に気血が滞ってしまうことで起きています。柴胡、香附子、薄荷が肝の熱をとり気の流れをスムーズにすると、気持ちの鬱屈がさっぱりとして更年期障害に伴うヒステリー症状が改善します。

滋陰至宝湯の使用法

「湯」は煎じ薬の意味ですが、病院では成分を濃縮乾燥させたエキス剤が主流でしょう。1日量を2、3回に分け、食前または食間に服用します。

副作用などはあるか

医師の指示にしたがって服用する限りは重篤な副作用の心配はほとんどありません。ただし甘草を含む処方なので、生薬特有の副作用であるの「偽アルドステロン症」に注意します。むくみや高血圧などがおこる場合があります。

その他、服用して発疹や胃の不快感、下痢などが現れた場合は早めに医師に相談してください。