最も有名な痛み止めの漢方薬「芍薬甘草湯」

芍薬甘草湯は、こむらがえりや胃痛、生理痛など、筋肉の緊張や痙攣から起こる様々な痛みに用いる「痛み止め」の漢方薬です。漢方で痛み止めといえばまずこれというくらいに名が通っています。

芍薬と甘草のみという非常にシンプルな処方であり、痛みに鋭く作用し即効性があります。長期服用してゆっくり体質改善を図る、というイメージの漢方薬の中にあって、頓服薬(症状が出てから対症療法的に使用する薬)としての使用に限られるという珍しいタイプの漢方薬です。

芍薬甘草湯の生薬について

芍薬(シャクヤク)…ボタン科シャクヤク、または近縁種の根です。「涼」の性質を持ち、身体にこもった熱が悪さをしている状態の時、それを冷ます力があります。また苦味・酸味を持ち、筋肉や神経を司る「肝」、血流を司る「心」に働きます。こうした特性から、主に鎮静、鎮痛、筋肉の緊張緩和、冷えの緩和といった作用を期待して多くの漢方薬に配合されています。気が逆上してイライラしている場合にはその熱を冷まして落ち着け、筋肉が緊張して血流が滞り、それによって痛みが生じているような場合はそれらを緩和する、といった働きをします。補血、清熱の代表的な生薬です。

甘草(カンゾウ)…マメ科カンゾウの根を乾燥させたものです。ありとあらゆる漢方処方に配合されている重要な生薬で、主な薬効は鎮痛、鎮咳、去痰、解熱、消炎、鎮静、健胃、強壮となり、痛みを鎮めつつ気力体力をつけてくれることから病中病後の弱った身体への処方には欠かせません。補虚・補気(滋養強壮)の代表的な生薬です。有効成分はグリチルリチンといい、西洋医療で抗炎症薬、抗アレルギー薬として応用されています。

芍薬甘草湯の効能

芍薬甘草湯は、「筋肉をほぐして痙攣性の痛みを取る薬」というところがポイントです。

漢方では、疲労や冷えなどが原因となって「気」や「血」といったエネルギー・栄養のめぐりが悪くなり、それによって身体のあちこちにこわばりや痛みが起こると考えています。気血の流れを正常に戻し、不足していれば補ってくれるのが芍薬甘草湯ということです。

具体的には2つの生薬の組み合わせが骨格筋・平滑筋の緊張を緩めて血流を回復し、鎮静作用によって痙攣を取ることで、お腹や筋肉の「キューッ」とした痛みを緩和します。

漢方薬は通常「証」といって服用する人の体質(丈夫か、虚弱かなど)を考慮する必要がありますが、芍薬甘草湯はどのような体質の人でも服用できます。

芍薬甘草湯の使い方

「湯」は煎じ薬の意味で、元来生薬を煮出したものを服用していましたが、現在では濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流です。煎じる手間がなく、手軽に服用できます。

芍薬甘草湯は頓服薬(症状が出た時に使用する)であり、こむらがえりや腹痛の予防として日常的に服用するということはできません。少なくとも「痛みの予兆がある」といった段階で使用します。

副作用などはあるか

甘草配合の漢方薬であり、有効成分の「グリチルリチン酸」は多量摂取するとむくみや高血圧などを生じる「偽アルドステロン症」の恐れがあるので、一回量を守ってください。何度服用してもこむらがえりや痛みを繰り返すようであれば医師に相談します。

他に服用している薬がある場合は、成分の重複に注意します。

腰痛の種類により漢方薬を使い分ける

「腰痛」とは腰のあたりが痛むことをさす言葉です。漢方の考え方では、五臓(肝・心・脾・肺・腎)のうち「腎」と関係が深いといわれています。からだが痛むときに考えたいのは、「何かがつまっていて痛いのか」あるいは「からだを養うことができなくて痛いのか」ということです。腰が痛む場合は、寒湿、湿熱、瘀血(おけつ)により経絡がつまっているか、「腎」にあるべき精がたらない腎虚が原因となっていると考えていくとよいでしょう。

漢方薬で治る腰痛の種類

腰痛の原因がわかれば、それに適した漢方薬を使えばよいのですから、症状からどのような原因の腰痛なのかを考えていくようにします。
まず、経絡がつまる原因としては、寒湿、湿熱、瘀血があります。
寒湿が原因で腰痛がおこった場合は、腰が冷えて痛かったり、腰をひねることができなくなったりします。動いたほうが楽で、じっとしているのではかえって痛みがおさまりません。雨がふったり、寒かったりする日には痛みがさらに悪くなります。これらは、寒邪には収縮する性質があり湿邪には粘りつく性質があるため、寒湿が経絡をつまらせているために痛みが出てきたと考えます。
湿熱による腰痛は、熱をもったような痛みを感じます。暑くて雨が降るような蒸し暑い日に痛みがひどくなります。これは湿熱が腰のまわりにあふれて経絡がつまってしまい痛みが出てくると考えます。お酒をよく飲む人では湿熱がからだにたまるため、この腰痛がおこりやすいといえるでしょう。運動がたりない人の場合には少しからだを動かすことで楽になるのがわかります。
瘀血によっておこる腰痛は、腰に刺すような痛みを感じます。どちらかというと昼間の痛みはそれほどでもありませんが、夜になるにつれて痛みが強くなってきます。瘀血で痛みが出るのは、瘀血が経絡をつまらせていると考えます。血行が悪い人におこる「ぎっくり腰」も瘀血によるものと考えてよいでしょう。
一方、腎虚の場合には、腰がだるくて力が入らなくなるような種類の腰痛があらわれます。疲れると悪化し、休むと楽になるのが特徴です。これは「腎」にたくわえられている精が弱まることでおこるため、年齢が高くなればなるほど、おこりやすいと考えられます。

腰痛に使われる漢方薬

寒湿腰痛におすすめしたい漢方薬は「苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)」です。水の中にすわっているかと思うほど腰が冷えて痛むときには、飲むと効果があらわれます。
湿熱腰痛におすすめしたいのは「四妙散(しみょうさん)」です。熱をとり湿を乾燥させる生薬が組み合わされています。
瘀血腰痛では「疎経活血湯(そけいかっけつとう)」を飲むと、血の流れをよくすることで痛みをやわらげます。特に急に腰が痛くなったときにはおすすめですので、常備しておいてもよいのではないでしょうか。
腎虚腰痛の場合には、腎虚の種類によって漢方薬を使い分けます。腎陰虚から腎陽虚の方向にいくにしたがって、六味丸(ろくみがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を使い分けたいのですが、腎陰虚と腎陽虚の判断は漢方の専門家に相談してみることをおすすめします。