滋腎明目湯とは

滋腎明目湯は、過労や歳を重ねたことによって起こる眼精疲労や視力障害に適応される漢方薬です。主に目のかすみや疲れ、痛み、ドライアイに用いられるほか、眼底出血、網膜症、白内障にも応用できるとされています。

漢方名の「滋腎」とは「腎を滋養する」という意味。中医学では泌尿器や生殖器も含む、下半身の機能を司る臓器を総称して腎と呼んでいます。成長や発育、生殖に関する働きを支え、生命力を蓄える重要な臓器です。

老齢になるにつれ、腎の精はどんどん消耗されてしまいます。だから高齢者では足腰が弱くなったり、性機能が減退したり、排尿障害が起こるのですが、実は「目」も腎が関わる臓器の1つです。

というのも、目を直接養うとされているのは「肝」なのですが、その肝を養っているのが腎なのです。

かすみ目や疲れ目が老化によるものであれば腎も同時に養ってあげる必要があるということで、この「滋腎明目湯」が使用されます。

滋腎明目湯の生薬について

・当帰(トウキ)…血を養い血行をよくする働きがあり、駆瘀血薬、活血薬として、鎮痛や強壮に役立っています。

・川芎(センキュウ)…活血行気の生薬で、血流を改善し、血が滞ることによって起こる頭痛や疼痛を和らげます。

・地黄(ジオウ)…補血・強壮の薬として名高く、貧血や虚弱体質の改善に使われます。

・芍薬(シャクヤク)…鎮痛、鎮痙作用があり、筋肉の緊張を和らげて痛みを取ります。

・人参(ニンジン)…チョウセンニンジンでとも呼ばれる滋養強壮の生薬です。高い疲労回復作用があります。新陳代謝機能の改善、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振に効果があります。

・甘草(カンゾウ)…鎮痛、鎮痙作用があり、炎症を和らげ緊張を緩和させます。

・黄蓮(オウレン)…充血や炎症を落ち着かせて痛み、出血などに効果があります。

・山梔子(サンシシ)…消炎、止血、解熱、鎮静作用があります。冷やす性質を持つため熱性の炎症性疾患に有効です。

・桔梗(キキョウ)…鎮咳、去痰作用のほか、末梢血管拡張作用を持ち排膿、抗潰瘍にも働きます。

・菊花(キッカ)…清熱、解毒作用があり、上半身の熱を取るため、のぼせやイライラ、目の充血などに効果があります。

・蔓荊子(マンケイシ)…発散作用があり、目や頭をすっきりさせます。風邪や頭痛、関節痛、眼の充血やかすみに用います。

・細茶(サイチャ)…いわゆる緑茶の葉です。苦味が頭をすっきりとさせ、熱を冷まして目の炎症を引かせます。下痢にも効果があります。

・白芷(ビャクシ)…余計な水分を乾かす作用によって水が溜まって起きる頭痛や痛みに効果があります。目の圧痛も鎮めます。

・灯心草(トウシンソウ)…軽い清熱作用があります。

滋腎明目湯の効能

歳を重ねると肝と腎が弱ってきます。その結果血流が悪くなり、目に栄養が行き渡らずにかすみや疲れ、痛みなどを生じます。そこで肝と腎にきちんと気血がめぐるように整えます。

滋腎明目湯は、血を補う「四物湯」に、生命エネルギー「気」を補う作用をプラスした処方です。本来血は肝で作られ、気は腎に貯められるとされていますから、それをカバーするということです。

当帰、川芎、芍薬、地黄は造血機能を担う肝の働きを助け、血を増やして貧血を改善します。肝は目の働きに直接関係しているため、それをサポートする意味も持ちます。

人参と甘草は、胃腸を整え活性化して気の生産を増やし、腎機能を助けることで肝を養う腎の力をバックアップします。

黄連や桔梗、山梔子は上半身の熱を冷まして肝が熱を持ちすぎないようにし、蔓荊子、菊花、細茶、白芷、灯心草は同じく冷ます力や抗炎症作用によって目の炎症を引かせ、痛みや疲れを改善します。地黄は目に潤いを与えます。

滋腎明目湯の使い方

煎じ薬の成分を濃縮乾燥させた「エキス剤」があります。1日量を3回に分け、食前または食間に服用します。煎じる手間がなく、手軽に服用できます。

副作用などはあるか

甘草が含まれる方剤なので、長期にわたって服用する場合は有効成分「グリチルリチン酸」の多量摂取による「偽アルドステロン症」に注意してください。他にも服用している薬がある場合は、成分の重複に注意します。

飲む目薬「杞菊地黄丸」目のお疲れに抜群の漢方薬

杞菊地黄丸は、目のかすみや疲れ目、乾燥・痛み、充血、まぶしいなど“目の不調”に用いる漢方薬です。またそれに伴う頭痛やイライラにも効果があります。

老いによる体力低下や代謝の低下を補う「六味地黄丸」がベースになっており、これに「枸杞子」と「菊花」を加えたのが杞菊地黄丸です。

枸杞子と菊花はどちらも“目にいい”と言い習わされ、薬膳の領域でも「枸杞子と菊花のお茶」が疲れ目対策として飲用されてきました。六味地黄丸が持つ「補腎(アンチエイジング)」の力と合わさることで、この2つの生薬が持つ「目」への効能がより力強く、効率よく生かされます。

歳のせいか最近体力がない、特に目が疲れやすくなった…と感じる人にピッタリの漢方薬です。冷やす作用があるため、のぼせ傾向の方に向いています。

杞菊地黄丸の生薬について

・枸杞子(クコシ)…杏仁豆腐や中華粥のトッピングでおなじみの、クコノミと呼ばれる赤い実です。強壮作用、鎮静作用、対めまい作用があります。また脂肪肝や高血圧を防ぎ、目を養います。

・菊花(キッカ)…野菊花の花そのものを用います。清熱、解毒作用があり、上半身の熱を取るため、のぼせやイライラ、目の充血などに効果があります。

・地黄(ジオウ)…ゴマノハグサ科ジオウ属植物の根茎です。補血・強壮の薬として名高く、貧血や虚弱体質の改善に使われます。

・山茱萸(サンシュユ)…ミズキ科サンシュユの果肉です。リンゴ酸やサポニンを含みます。補血作用、止汗作用、止尿作用があり、滋養強壮として、また尿失禁などに用いられます。

・山薬(サンヤク)…食卓に上がる山芋のことです。消化器官の滋養強壮作用、また腎の働きを良くするので頻尿や老化防止にも効果があります。

・茯苓(ブクリョウ)…サルノコシカケ科マツホドの菌核を輪切りにしたもので、体内の水分を調節する生薬です。

・沢瀉(タクシャ)…サジオモダカという植物の根です。茯苓と同じく利尿作用やむくみ解消作用があります。

・牡丹皮(ボタンピ)…ボタンの根の皮を用います。血のめぐりを改善する作用のある生薬です。熱による痛みを除き、腫れものを治す作用も持ちます。

杞菊地黄丸の効能

杞菊地黄丸は、枸杞子と菊花の「肝(栄養の貯蔵や造血の器官)」を滋養する作用によって「目」の疲れやかすみ、充血などの不快な症状を取りのぞきます。枸杞子は足りない養分を補うイメージ、菊花はこもった悪い熱を発散して冷やすイメージです。

漢方では、目は肝によって養われるとされています。肝が弱って気を巡らせる力が滞ったり、血が薄くなったりすると、目にも栄養や潤いが行かなくなってかすんだり痛んだりと不調が出てくるのです。肝が元気になれば、そこから力をもらっている目も機能を取り戻すことができます。

また、この「肝」は「腎」とも深いつながりを持っています。「腎」は老廃物の代謝や生殖活動を司り、老いとともに弱っていく傾向にありますが、腎が弱ると解毒を担当する肝にも負担がかかり悪影響を及ぼします。

ベースである六味地黄丸の処方は腎を補う処方ですから、一緒に配合されている肝を補う生薬の力を支えてくれることになります。

杞菊地黄丸の使用法

「丸」は生薬を薬研で砕き、蜂蜜などで小さな丸薬に固めたものです。メーカによって丸剤の大きさが違いますので、それぞれの1日服用量をよく確認して使用してください。基本的には、1日2、3回に分割して服用します。

副作用などはあるか

胃腸が弱く下痢しやすい傾向の人は慎重に服用してください。また、まれに皮膚の発疹やかゆみが現れる場合もあります。

いずれにせよ、2、3回服用して効果がなかったり、別の部分が悪化したと感じた場合は医師・薬剤師に相談してください。