虚弱な子供の夜泣きや癇に「柴胡清肝湯」肝の熱を取る漢方薬

柴胡清肝湯は、神経過敏の傾向がある虚弱小児の夜泣きやヒステリー、鼻炎、湿疹の治療を目的に、比較的最近に創出された漢方薬です。明治の漢方医、森道伯は、この方剤を「解毒証体質」に用いるとしました。「解毒症体質」とは肝機能低下症の一種。肝が弱ることで解毒が十分できず、炎症を起こしやすい体質のことです。柴胡清肝湯はその名の通り機能が低下した「肝」を清めて炎症を鎮めます。

熱が過剰になっている「肝」と上半身を冷やすので、神経の高ぶりを鎮めます。また、皮膚やのどに炎症が出やすい場合に向いています。

柴胡清肝湯の生薬について

・柴胡(サイコ)…亜急性期の解熱、解毒、鎮痛、鎮静に使われる代表的な生薬です。寒性で、熱を冷ます性質を持ちます。

・黄芩(オウゴン)…肺と大腸の熱を冷まし消炎・解熱に働く生薬です。

・黄柏(オウバク)…寒性の生薬で解熱、消炎作用があり、炎症性の下痢などに効果を表します。また腎に働き利尿作用をもたらします。

・黄連(オウレン)…熱を取り、余計な湿を乾かすため鎮静、消炎、整腸健胃、解毒に効果をあらわします。

・栝楼根(カロコン)…肺を潤す力があり、去痰、止渇、排膿作用があります。

・甘草(カンゾウ)…鎮痛、鎮痙作用があり、炎症を和らげ緊張を緩和させます。

・桔梗(キキョウ)…鎮咳、去痰作用のほか、末梢血管拡張作用を持ち排膿、抗潰瘍にも働きます。

・山梔子(サンシシ)…消炎、止血、解熱、鎮静作用があります。冷やす性質を持つため熱性の炎症性疾患に有効です。

・地黄(ジオウ)…補血・強壮の薬として名高く、貧血や虚弱体質の改善に使われます。

・芍薬(シャクヤク)…鎮痛、鎮痙作用があり、筋肉の緊張を和らげて痛みを取ります。

・川芎(センキュウ)…血流を改善し、血が滞ることによって起こる頭痛や疼痛を和らげます。また香りによって気うつを晴らします。

・当帰(トウキ)…血を養い血行をよくする働きがあり、冷えや冷えによる痛みを取ります。

・薄荷(ハッカ)…言わずとしれた清涼成分メントールを含み、身体を冷やしながら体表の毒を発散させます。

・連翹(レンギョウ)…清熱解毒作用、消炎作用、排膿作用があり、熱や毒素を取り除きます。

・牛蒡子(ゴボウシ)…ゴボウの果実です。解熱、消炎の作用があります。

柴胡清肝湯の効能

清熱・解毒の代表漢方薬「黄連解毒湯」に貧血の漢方薬「四物湯」を合わせて生薬を追加した処方です。熱を冷まして解毒し、血流を良くし、皮膚や肺を潤して膿を出す作用があります。

特に情緒や血液をコントロールしている「肝」という器官の熱を取る、というところがこの漢方薬の主な方意であり、その作用によって神経の高ぶりが鎮まり夜泣きやヒステリーに効果があります(柴胡、黄芩、黄連、薄荷)。

また、その熱で乾いてしまった「肺(呼吸器)」を潤して咳を抑えます。肺は皮膚とも関わりが深く、肺の乾燥は皮膚に熱をもたらしますが、生薬の働きによって皮膚の熱が去るために湿疹が改善されます(連翹、牛蒡子、栝楼根、桔梗、薄荷)。

そして当帰、地黄、芍薬、川芎が肝への血のめぐりを改善し、血液に栄養を与えて虚弱体質を治します。

柴胡清肝湯の使用法

「湯」は煎じ薬の意味ですが、現在では濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流です。1日量を2、3回に分け、食前または食間に服用します。

苦味の強い方剤なので小児には飲みにくいかもしれません。冷やして飲むと苦味が楽になります。

副作用などはあるか

甘草を含む処方なので、生薬特有の副作用である「偽アルドステロン症」に注意します。むくみや高血圧などがおこる場合があります。その他、服用して発疹や胃の不快感、下痢などが現れた場合は早めに医師に相談してください。

冷えを伴う疼痛に用いる漢方薬「芍薬甘草附子湯」

芍薬甘草附子湯は、こむらがえりや痙攣性の疼痛を和らげる「芍薬甘草湯」に冷えを取る附子末を加えた漢方薬です。芍薬甘草湯と同じく筋肉の痙攣を伴う疼痛に用いますが、附子による温めの作用が大変強いため、必ず「冷え」を併発している方に使用を限ります。

冷えは痛みの原因になるとも言われており、証(体質)があっていれば体が温まり、ただ芍薬と甘草でその場の痛みを鎮めるより効果的に楽になります。

神経痛や関節炎、肩こりなどで、冷えると酷くなるという場合に適します。

芍薬甘草附子湯の生薬について

・芍薬(シャクヤク)…ボタン科シャクヤク、または近縁種の根です。「涼」の性質を持ち、身体にこもった熱が悪さをしている状態の時、それを冷ます力があります。また苦味・酸味を持ち、筋肉や神経を司る「肝」、血流を司る「心」に働きます。こうした特性から、主に鎮静、鎮痛、筋肉の緊張緩和、冷えの緩和といった作用を期待して多くの漢方薬に配合されています。気が逆上してイライラしている場合にはその熱を冷まして落ち着け、筋肉が緊張して血流が滞り、それによって痛みが生じているような場合はそれらを緩和する、といった働きをします。補血、清熱の代表的な生薬です。

・甘草(カンゾウ)…マメ科カンゾウの根を乾燥させたものです。ありとあらゆる漢方処方に配合されている重要な生薬で、主な薬効は鎮痛、鎮咳、去痰、解熱、消炎、鎮静、健胃、強壮となり、痛みを鎮めつつ気力体力をつけてくれることから病中病後の弱った身体への処方には欠かせません。補虚・補気(滋養強壮)の代表的な生薬です。有効成分はグリチルリチンといい、西洋医療で抗炎症薬、抗アレルギー薬として応用されています。

・加工附子(カコウブシ)…有毒植物として有名なキンポウゲ科カラトリカブト、または同属植物の根ですが、乾燥し、さらに加工処理して減毒したものなので中毒の心配はありません。大抵はパワフルな温熱効果を持ちます。著しい冷えや虚脱に用いられてきました。強心、鎮痛、鎮静作用があります。

芍薬甘草附子湯の効能

もとになった「芍薬甘草湯」は急性のこむらがえりや胃痛が起こった際に頓服として服用する漢方薬ですが、附子が加わったことで性質が変わり、芍薬甘草附子湯はどちらかと言えば慢性化した神経痛や関節痛、肩こりに用います。血の不足を補い、胃腸を養って消化吸収の力をつけ、それによって筋肉を滋養する漢方薬です。

配合生薬の芍薬には痛みを鎮める他にも、慢性の病気で血を消耗した肝を補い、悪い熱は冷ますという作用があります。筋肉は血で養われているため、血が不足することで筋肉に痛みが生じるのです。

また芍薬は甘草ともに脾(胃腸)を養う生薬でもあるため、一緒に働くことで脾の気を補います。脾が元気になることで気の生産が活発になり、寒さや風などの邪気を防ぐ免疫力がつきます。

そして附子は身体全体に陽気を補い、胃腸や体表を温めて体温を上げ、2つの生薬の働きをサポートします。

芍薬甘草附子湯の使い方

煎じ薬の成分を濃縮乾燥させた「エキス剤」が主流です。1日量を2、3回に分け、食前または食間に服用します。煎じる手間がなく、手軽に服用できます。

副作用などはあるか

甘草の配合量が多い漢方薬なので、長期にわたっての処方がされる場合は有効成分「グリチルリチン酸」の多量摂取による「偽アルドステロン症」に注意してください。他に服用している薬がある場合は、成分の重複に注意します。

また体力がない冷え性の方に向く処方であり、体力充実(実証)の方が用いると温まり過ぎて鼻血などを起こす恐れがあるので、用いないようにしてください。心疾患の既往歴がある方も注意を要します。服用の際には医師に相談しましょう。