漢方は古代中国の”二元論”の考え方を取り入れています。
二元論を基にすると自然の中には陰と陽(陰陽)があり、それらがバランス良く存在することで調和しています。
この陰陽は漢方の治療でも重要な考え方の一つです。
陰陽とは
陰陽は古代中国の自然哲学です。
二元論を基にすると、陰と陽(陰陽)は単に日陰と日向といった事だけでなく、天と地、山と海、昼と夜、男と女、寒と熱等があります。
これらがバランスよく調和していることが大切です。
陰陽のイメージ
私たちは普段の生活でも「あの人は暗い」とか「私は明るい性格」と陰と陽で分けることがあります。
漢方での陰と陽のイメージは以下の通りです。
●陽…明るい・上にある・上に昇る・発散する・温かい・動的・積極的
(精神的・機能的・無形)
●陰…暗い・下にある・下に降りる・収斂(しゅうれん)する・冷たい・静的・消極的
(肉体的・器質的・有形)
人の体と陰陽のイメージ
人で言えば”陰”は体を潤して冷やす機能で、活動性が低く寒がりの人のイメージ。
”陽”は体を乾かして温める機能で、活動性が高く熱がりの人のイメージです。
人は暑がりの人がいれば冷え性の人がいて、体力のある人が入れば体力があまりない人もいます。
そのように一人一人の体に合った漢方薬を探すためにも、この陰と陽の考え方は大切です。
健康な時には陰と陽がバランスよく保たれていますが、体調が悪く病気の時には陰と陽のどちらが強くなっているのかを判断し治療します。
陰陽と証
漢方での陰陽では、陽の要素の強いものを”陽証”、陰の要素の強いものを”陰証”と呼びます。
そして漢方薬は証によって判断されます。
※証は陰陽(いんよう)と虚実(きょじつ)、気(き)、血(けつ)、水(すい)といった「ものさし」から判断されます。
その「ものさし」から体格や体質、体力や心理状態などを測り、その患者さんに合った漢方薬が処方されます。
そのため漢方薬は西洋医学と異なり、病名は同じでも証が違うことで別の漢方薬が処方されたり、病名は違っても証が同じことで同じ漢方薬が処方される特徴があります。
陽証と陰証とは
漢方薬を処方する上で重要な”証”も陰と陽でできています。
例えば普段から脈が速く、活動的で熱性をもち汗をかきやすい特徴の人は「陽証」です。
一方で代謝が悪く、非活動的で体が重くてだるく感じるような寒性の特徴をもつ人は「陰証」と判断されます。
証もどちらの方が良いというわけではなく、バランスのとれた状態にすることが重要です。
陽証と陰証の例は以下の通りです。
●陽証…脈が早い・高血圧・暑がり・発汗多め・顔が赤い・口渇・便秘
●陰証…脈が遅い・低血圧・寒がり・発汗少なめ・顔が青白い・下痢気味
陰陽の臨床的意味
臨床の現場では、陰陽は”病態と体質を表現する尺度”とされています。
慢性期における陰陽
●陽…代謝が盛んで基礎体温が高い
●陰…代謝が衰えていて基礎体温が低い
急性期における陰陽
●陽…炎症反応(発熱など)が顕著
●陰…炎症反応(発熱など)が微弱
健康と陰陽のまとめ
人の体でも陰陽のバランスが整っていることで”健康”と判断されます。
つまり陰陽が乱れることで体調が悪く病気になると考えられています。
漢方薬の処方で大切な証の考え方も陰陽を基に構成されており、総合的にどちらに傾いているかが分かることでより効果のある漢方薬が処方されます。