漢方は病気にではなく、患者さんの体質・体調も整えて体質から治療するものです。
その効果は西洋薬と比べて緩やかでほとんどの場合、数か月以上の服用が必要になります。
患者さんの例
●漢方専門薬剤師が診た更年期症状の人の治療の場合
症状例:1日のうちに何度も顔が熱くなるホットフラッシュに悩まされる
《治療の経過》
漢方を服用して1か月目には回数の軽減がみられる。
2か月目には1~2回まで症状が減少。
3か月目には漢方薬を半分の量に減らすことに成功。
▲1度目の失敗
半年が経ち、症状も良好になってきたことから1/3量にした途端、また1日のホットフラッシュの回数が増える。
1/2量に増やして、症状の安定を図る。
▲2度目の失敗
8か月後には1日の症状が1~2回に減り、症状も収まってきたので再度1/3量に。
ところが季節・時期の問題もあるのか、症状がぶり返し1/2量に増やす。
◆治療期間を考える
2度の失敗経験から、その後も1/2量量で2年半継続。
その2年半の間には1日に症状がない日がほとんどで、全く症状が出ない週も多くなるように。
しかし梅雨や季節の変わり目・気圧の変化や天気にも左右されて1日に複数回あることもあった。
◆漢方のやめどきポイント
その後「もう減らしても大丈夫」という自信で1/3量に減らし1年半継続。
最後の3~4か月間は全く症状が出なくなり、もう大丈夫と思って終了。
《漢方専門薬剤師のまとめ》
この患者さんの場合はホットフラッシュ以外は他の症状もなく、いたって健康な人だったようです。
それでもホットフラッシュの症状の緩和には約5年の服用が必要になり、体質的な冷え症も改善されたので終了となりました。
未病(みびょう)と漢方薬
”未病”とは、病気ほどではないけれど健康とは言えない状態を指しています。
色々な兆候は気になるものの、日常生活に支障がないことから無理をしてしまいがちです。
未病にも対策が必要
未病は放っておけば治るわけではなく、むしろ放っておくことで乱れが大きくなり病気になることもあります。
これには心の状態も深く関わっていて、未病の治療には”心と体の両方を健康な状態に保つ”ことが大切です。
漢方は未病の予防にも最適のため、健康な人の気になる症状も漢方薬で体質から改善するのがおすすめです。
患者さんの例2
●漢方専門医師の指示のもと漢方薬を服用した人の話
症状も落ち着いたころ、漢方薬を服用するのを忘れることがあります。
忘れても症状が落ち着いている時間が多くなり、必要になったときにはまた服用して、必要なくなったら飲まなくて良い。
漢方薬が必要か必要ではないかは、自分の体が知っているとのことでした。
症状が改善されているようであればそのまま終了し、再度症状が気になるときには服用することを勧められたようです。
さいごに
漢方薬はほとんどの場合、長期的な治療を見込んでいます。
そのため症状が落ち着いたから服用も止めようというよりは、落ち着いたら処方する量を減らしていく。
そのまま継続して「漢方薬がなくても平気だ」という自信が出るまでは服用した方が良いようです。
漢方薬のやめどきも、漢方専門薬剤師・漢方専門医等に相談して決めると良いでしょう。