漢方薬に使われる「鹿茸」

鹿茸(ろくじょう)は、雄鹿のまだ骨化していない毛の生えているような幼い角で、漢方薬に使われている生薬です。生えてから20日間以内のやわらかい角のため、かたくなってとれた角とは異なり、鹿茸の断面をみると鹿の血液がにじんでいるのがわかることでしょう。

鹿の幼い角「鹿茸」は補陽薬

古くから生命力が強いと考えられている鹿の幼い角「鹿茸」は、からだに陽を補う補陽薬です。漢方薬は患者さんのからだの状態(証)にあわせて用いられますので、鹿茸が合う場合は、からだに陽がたりない陽虚証のときです。陽虚証に使われる薬は、ほとんどのものが腎陽を補う働きをもっています。
腎陽は、精を陰陽でわけたときの陽にあたるものです。精は車でいえばガソリンにあたるようなもので、生まれたときには父母から「先天の精」としてもらい、生まれてからは太陽の光や食物から「後天の精」がつくられます。その精を使って生きているのですが、腎陽がたらないということは、子どもでは発育が遅くなったり、高齢の人では耳が聞こえづらくなったり腰が弱くなったりというような老化がすすむことになります。また、インポテンツになったり不妊症になったりするのも陽の不足で冷えることが原因とされています。そのほか、腎陽が脾陽(消化機能に関係する)をあたためているのですが、腎陽がたらないと脾陽をあたためることができず、朝早く下痢をおこす「五更泄(ごこうせつ)」がおこるようにもなります。
腎陽がたりないことでおこる症状を回復するために、漢方では腎陽を補う薬を使います。鹿茸は腎陽を補うため、冷えやインポテンツ、不妊症、五更泄などに効果があります。そのほか、鹿茸は、筋骨の発育が遅いときにも効果があることが知られています。ただし、飲んでからすぐにではなく、効果が出るのには1週間ほど時間がかかることでしょう。
なお、熱があるときや、陰がたりなくてほてるようなときには使わないこと、急に大量を使うと熱が出ることがあるので少しずつ使うことを注意事項として覚えておきましょう。

鹿の幼い角「鹿茸」が使われている漢方薬

ここでは鹿茸と他の生薬と組み合わされた漢方薬である鹿茸大補丸をご紹介しましょう。次のような生薬が含まれています。
・鹿茸(ろくじょう)、肉従蓉(にくじゅよう)、杜仲(とちゅう)…腎陽を補います。肉従蓉は便秘に、杜仲は筋骨を強める効果があります。
・附子(ぶし)…心腎脾の陽を補います。
・人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)…気を補います。
・当帰(とうき)、熟地黄(じゅくじおう)、芍薬(しゃくやく)…血を養います。
・石斛(せっこく)…陰を補います。
・五味子(ごみし)…腎を補うことで精をとどめます。
・半夏(はんげ)…化痰作用があります。
・生姜(しょうきょう)…半夏と組み合わせて用いられる生薬で解毒作用をもちます。
・茯苓(ぶくりょう)…利水作用があります。
・大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)…生薬を調和させます。
この鹿茸大補丸は、身体が衰弱して、やせて皮膚が枯れてしまい、貧血があり、食欲がない人に使います。含まれている生薬の働きをみるとわかるように、さまざまなものを補う漢方薬です。血を補い、健胃強壮、食欲増進、疲労回復、神経痛、関節炎、肩こり、冷え症に効果があるとされています。